太宰治『人間失格』

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 注意事項

・いわゆるネタバレを含みます。

・あらすじは作品の一部を運営者が独断で切り抜き、纏めたものです。

・作中で設定などが明らかになる順序が前後している場合があります。

・あらすじによって作品を理解することや、その面白さを判断することはできません。ぜひ作品自体を手に取ってみてください。

 

以上のことご了承の上お読みください。

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あらすじ(約3,000字)

 裕福な家に生まれた葉蔵は、生まれつき人間の生活というものがわからず、他人を恐れ、道化を演じるという手段で他人と関わっていた。しかし彼は自分の本心はその真逆だと感じており、他人の嘘や人に打ち明けられない様々な悩みに震えていた。

 

 葉蔵は他郷の中学校に進学し、親戚の家に預けられることになる。彼は中学校でも道化によって人気を獲得し、他郷の地は肉親の目がある故郷よりも演じやすく、自分の正体を完全に隠蔽したと安心していたが、ある日鉄棒でわざと失敗したことをクラスメイトの竹一に見破られてしまう。葉蔵は震撼し、竹一が周囲に言いふらすことがないよう、四六時中彼を監視し、彼に自分の道化がわざとではないと思わせ、あわよくば唯一無二の親友になってしまおうと決心した。

 

 ある雨の日、下駄箱で立ち往生している竹一を家へ招き、彼の爛れた耳を掃除してやる。竹一も流石にこれが偽善だとは気づかず、葉蔵に対して「お前は女に惚れられる」と予言めいた世辞を言う。葉蔵は惚れられるということを、下品でふざけているものに感じていたが、親戚の娘たちと仲良くしていることなど、思い当ることはあった。また別の日、竹一がゴッホの自画像を見て「お化けの絵」だと評すのを聞き、葉蔵は画家たちが自分のように人間に恐怖していたこと気づき、感動する。葉蔵が自画像を描くと陰惨な絵が出来上がり、そこに自分の本性を見た。竹一には「お前は、偉い絵画きになる」というもう一つの予言をもらう。

 

 葉蔵は中学校終了後、東京の高等学校に通い始める。本当は美術学校に通いたかった葉蔵だが、父の意向に従ってその学校に入学した。葉蔵は上野にある父の別荘で暮らすことになる。父は別荘を留守にすることが多く、葉蔵は学校を休んで家で読書や絵描きばかりしていた。また、父が上京してきた際には登校するふりをして、画塾でデッサンの練習に明け暮れた。葉蔵は画塾で堀木という男と知り合う。堀木は遊びがうまく、葉蔵は酒や煙草、淫売婦や左翼思想などを彼から教わった。はじめは堀木を軽蔑していた葉蔵だが彼の金遣いの巧みさや沈黙を作らない話し方を見て、堀木との交友にはまっていった。

 

 父の任期終了に伴って別荘が引き払われることになり、葉蔵は下宿生活を始めた。今までは父の力を借り、お金を自由に使っていた葉蔵だが、定額の送金のみでの生活に困窮を強いられる。加えて学校の出席不足、左翼運動の活発化も彼を追い詰めていた。葉蔵は立ち寄ったカフェの女給であるツネ子にお金の心配をせずに飲ませてもらうが、その時の葉蔵は道化も演じずに本来の陰鬱な自分のままでいられた。葉蔵はツネ子の部屋に転がり込み、そこで彼女の生い立ちや夫が刑務所にいることなどを聞き、彼女と一夜を共にする。幸福な夜だったが、しかし葉蔵はその幸福さえ臆病になり、ひと月ほど彼女から距離を置いた。

 

 十一月の末、堀木とともにツネ子の働くカフェに足を運んだ。ツネ子は堀木にキスされそうになるが、堀木は彼女のことを「貧乏くさい女」と評してやめにした。葉蔵はそれを見て貧乏同士の親和感に心を動かされる。葉蔵はその夜、前後不覚になるほど酒を飲み、ツネ子の部屋で朝を迎えた。その朝、彼女から心中を提案され、それに同意する。まだ決心がついていない葉蔵だったが、同日の午前にツネ子と二人で入った喫茶店にて、支払いもできない自分の姿を指摘されたことをきっかけに、自ら進んで死のうと決意する。その夜、二人で鎌倉の海に入水したが、彼女は死に葉蔵は助かった。

 

 運ばれた病院にて、葉蔵は生家との絶縁を告げられるが、ツネ子を失った悲しみの方が大きかった。自殺幇助罪の取り調べを終え、起訴猶予処分となった葉蔵は、父の太鼓持ちのような人物であり、学校の保証人になっていたヒラメのような顔の男に引き取られる。

 

 葉蔵は学校から追放され、ヒラメの家で故郷が密かに送ってくれる僅かな仕送りでの生活を始めた。本当は葉蔵が学校に入る意思を見せれば、故郷がもっと多くのお金を送る話になっていたが、ヒラメの持って回った話し方から葉蔵はそれを察することができず、迷惑をかけるわけにいかないとヒラメの家を出る。堀木のもとを訪ね、そこで出会ったシズ子という未亡人の記者に拾われ、彼女のアパートに男妾のように転がり込むこととなった。

 

 シズ子の力添えで漫画の仕事を貰い、葉蔵は故郷と縁を完全に切って、彼女と同棲することになる。漫画はそれなりのお金になったが、それでも寂しさと人間不信は解消せず、シズ子の娘——シゲ子との他愛のない会話の中でも葉蔵はぎょっとさせられることがあった。葉蔵は酒代の欲しさに漫画を描き、野卑な飲み方をし続け、毎回酔っぱらって帰っては、だらしなく眠るという生活を続けていた。ある日、酔って家に帰ると兎抱えているシズ子とシゲ子を目にする。その幸せそうな二人の姿に、自分が間に入ってその幸せを壊すことを恐れ、葉蔵はシズ子の家を後にする。

 

 葉蔵は京橋のバーのマダムに許しをもらい、その二階に居座ることになる。バーに居座る葉蔵はいくらか不可解な人物のはずだったが、客も店員も彼を可愛がり、酒を飲ませてくれた。しかし彼の人間に対する恐怖は薄れず、酒におぼれながら卑猥な雑誌に原稿を発表するなどしていた。

 

 バーの向かいのタバコ屋のヨシ子という娘に酒をやめろと忠告された葉蔵は、彼女に酒をやめられたら嫁に来てくれという約束をする。翌日に葉蔵は昼から飲んでしまうのだが、純粋な彼女は葉蔵が約束を破るはずがないと信じず、葉蔵は彼女のそんな処女性に魅せられて結婚を決意する。

 

 ヨシ子を妻に迎えて二人暮らしを始めた葉蔵は酒をやめ、漫画の仕事に精を出した。しかし、人間らしい暮らしが始まったところに堀木が現れ、二人で遊び歩く生活が始まった。堀木が葉蔵の部屋を訪れた日、葉蔵は堀木が自分のことを真人間ではなく恥知らずの阿保とみなしていることを知る。怒った葉蔵は堀木を部屋から追い出して、一階に食べ物を取りに行かせるが、堀木すぐに引き返してきた。二人で一階にいるヨシ子の様子を見に行くと、彼女は漫画商人の男に犯されていた。

 

  人を信じるというヨシ子の行為が汚されたことに対し、葉蔵はすべてに自信を失い、人を底知れず疑うようになり、再びアルコールに傾倒する。また、それ以来ヨシ子は葉蔵に気を使い、常におどおどした態度をとるようになった。その年の暮れ、葉蔵はヨシ子が自殺のために致死量の睡眠薬を隠しているのを見つけ、自分でそれを飲んで倒れる。三昼夜死んだようになってようやく目を覚ますと、ヨシ子は一層おろおろして口もきけない様子になってしまった。

 

 東京に大雪の降った夜、葉蔵は喀血する。彼は薬屋に行き未亡人の奥さんにモルヒネを処方してもらう。モルヒネを注射すると陽気になり仕事に精が出たが、気づけばモルヒネがなければ仕事ができなくなっていた。葉蔵は完全な中毒者となり、薬を得るために春画のコピーに手を出し、さらには薬屋の未亡人と関係を持つようになる。この地獄のような生活から逃れるため、最後の頼みとして実家に手紙を書くも返事は来ず、葉蔵は入水の覚悟を決めたが、そこでヒラメに連れられて、大きな病院に入れられた。

 

 葉蔵はそこがサナトリウムだと考えていたが、実際は脳病棟であり、自身が完全な廃人、「人間失格」であると悟る。後日、父の訃報とともに東京を去り、故郷の付近で療養することとなった。葉蔵は腑抜けたようになり、苦悩する能力さえ消え、そこで六十近くの女中とともに幸福も不幸もなく暮らしていく。

 

おわりに

今回は省略しましたが、

・葉蔵の三枚の写真、

・幼少期の葉蔵の道化と下男下女との関係、

・葉蔵に想いを寄せる三人の女性、

・シズ子の家での生活を批判する堀木、

・バーのマダムから見た葉蔵、 など

他にも重要な場面や描写が無数にあります。 また、このあらすじでは作者の巧みな文章表現を楽しむことはできません。 (あらすじはあくまでサイト運営者が個人で書いたものであり、作品の持ち味や面白さを表現することは出来ていません) ぜひ作品自体を読んでみてください。

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